2日目の鍋は旨い

走る 停まる また走る いつか止まる

不定期回送列車の編成と運行番号

 先日知り合いの撮り鉄と共に沿線に赴いたときに気付いたのだが,意外と知られていないものである.

 

【2019年7月8日追記】本稿では検測列車(74運行)を「不定期回送列車」と表記していますが,正しくは「不定期試運転列車」です.

1.列車の類別

 普通に撮影をしているだけだと余り触れないが,重要な概念なのでここで一度定義したい.池上線・東急多摩川線では以下の5種類が存在する:

  1. 定期営業列車
  2. 定期回送列車
  3. 不定期回送列車
  4. 不定期試運転列車
  5. 臨時列車

 定期営業列車は言うまでもなく時刻表に記載され,運行図表の用いられる全ての日程において旅客の輸送に供される列車である.同様に全ての日程で運転される回送列車を定期回送列車と呼ぶ.

 不定期回送列車は定期回送列車と異なり,運行図表上に回送列車として記載はあるものの,運転日を指定して運転するものである.試運転列車も毎日運転する訳ではないので不定期の枠に入る.

 以上4種類が運行図表上に時刻の記載されている列車である.臨時列車は原則として運行図表上には時刻を記載せず,案件の発生とともに運転時刻が決定されると考えてよい.

 

2.不定期回送列車の編成

 恐らくは車輌編成こそが池上線・東急多摩川線における不定期回送列車の観察を困難にしているのではないだろうか.多くの初心者が陥りがちなミスの一つに「目的別に時刻が変わる」という認識があるが,これは大方において正解であるようで実際の運用では解釈が難しい.

 

 差し当たって不定期回送列車の類別から始める必要がある.これは運行図表上でも記載されていない,解説のための類別であるが,不定期回送列車はその性質から以下の4種類に類別できる:

  1. 長津田検車区等への入出場に伴う回送(多摩川駅で増解結を伴う)
  2. 長津田検車区等への入出場に伴う回送(多摩川駅で増解結を伴わない)
  3. 検測列車
  4. 夜間留置箇所変更

 入出場に伴う回送は行程上東横線目黒線大井町線田園都市線の各線区を走行する.雪が谷検車区所属の車輌の内以上4線区で使用されているATC装置を搭載するのは7000系電車のみであるため,それ以外の車種では長津田検車区所属の7500系電車を併結する事となる.ATC区間内での編成構成は2019年3月16日現在

  • デヤ7550号+デハ1310形-デハ1200形-クハ1000形+デヤ7500号
  • デヤ7550号+クハ1700形-デハ1600形-デハ1500形+デヤ7500号
  • デヤ7550号+デハ1724号-デハ1624号-クハ1524号+デヤ7500号

の5輌となる(左端が下り方).一方で池上線雪が谷大塚駅蒲田駅②番線間・東急多摩川線沼部駅蒲田駅間の有効長は4輌であるため,回送列車は2列車に分割する必要がある.従って,入出場に伴う回送でも2種類存在することが分かる.

 検測列車は長津田検車区所属の7500系電車によって運転され,出入庫は奥沢駅である.

 夜間留置箇所変更は工事等で発生し,定期営業列車の運行時間拡大のような形で運転される.例えば:【2018年改正】池上線定期回送の考察 - 2日目の鍋は旨い

 

 ここで注意しなければならないのは,ATC区間内の時刻に関わらず7000系電車・7500系電車は増解結を伴う回送列車にも充当可能であるという事である.原則としてこれらの車種で東横線に直通する不定期回送列車は増解結を伴わない列車の時刻を用いるが,臨時列車の送り込みや返却など,想定されていない時刻に発生した臨時回送列車を不定期回送列車に充てる例が存在する(臨時の営業列車を不定期回送列車に充てた例は私の知る限りでは存在しない).その為,先に述べたような「運転目的と運転時刻とが一対一に対応する」という言説は誤りであると言えよう.

 

3.不定期回送列車の運行番号

 既に述べたように(【2006年改正】池上線の運行番号付与方法 - 2日目の鍋は旨い不定期回送列車は検測を除き90番台の運行番号を使用する.具体的にどの番号がどのような用途で用いられるかはここでは記述しない.

 さて,この運行番号であるが基本的に用途毎に番号を振り分ける.すなわち単独の入出場であれば入場であろうと出場であろうと,また午前であろうと午後であろうと同じ番号を用いることになる.したがって運行番号の区分は以下のようになる:

  • 長津田検車区等への入出場に伴う回送(多摩川駅で増解結を伴う)①
  • 長津田検車区等への入出場に伴う回送(多摩川駅で増解結を伴う)②
  • 長津田検車区等への入出場に伴う回送(多摩川駅で増解結を伴わない)
  • 検測列車
  • 夜間留置箇所変更(組合せ毎に異なる)

留置箇所変更は「本来の留置箇所」「変更先」の組合せに対して1つの運行番号が与えられる.また「運転目的と運行番号とが一対一に対応する」という言説も誤りだと言える.

 

4.まとめ

  • 不定期回送列車は運行番号から大まかな運転目的を判断することができる
  • しかしその一方で車輌の制約に反しない限りは想定される目的を逸脱した用途で運転可能である